毎年3月に公示地価が発表されると、「うちの地価が上がったから、その分高く売れますか」というご相談が増えます。答えは、上がることもあれば、まったく関係ないこともある、です。何が違うのかを整理します。
公示地価とは何を指すのか
公示地価は、国土交通省が毎年1月1日時点の土地の価格を調査し、3月に公表するものです。全国に定められた「標準地」について、不動産鑑定士が評価した1㎡あたりの価格が出ます。
重要なのは、これが「標準地」の価格だということです。あなたの土地そのものの価格ではありません。標準地は、その地域の標準的な条件を備えた土地として選ばれており、形が整っていて、道路にきちんと接していて、傾斜がない土地が選ばれます。
実際の売買価格とは、なぜズレるのか
公示地価は、更地を前提に、売り急ぎなどの特殊な事情がない状態での価格として算定されます。ところが実際の取引では、建物が建っていて、売主に期限があって、買主に住宅ローンの制約があります。この差が、そのままズレになります。
| エリア | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年 | 3年間の変動 |
|---|---|---|---|---|---|
| 中心部エリア | 412,000円 | 428,000円 | 447,000円 | 463,000円 | +3.6% |
| 近郊エリア(駅近) | 486,000円 | 509,000円 | 538,000円 | 561,000円 | +4.3% |
| 近郊エリア(バス便) | 398,000円 | 417,000円 | 441,000円 | 468,000円 | +6.1% |
| 住宅地エリア | 624,000円 | 641,000円 | 663,000円 | 679,000円 | +2.4% |
| 郊外エリア | 385,000円 | 394,000円 | 406,000円 | 415,000円 | +2.2% |
当社の商圏における推移
上がっている帯
近郊エリアのバス便地区が、3年間で6.1%と最も上がっています。中心部の価格が上がりすぎて手が届かなくなった層が、少し外側へ移ってきているためだと見ています。実際、当社への購入のご相談も、この帯が最も増えました。
横ばいの帯
住宅地エリアは3年で2.4%と、ほぼ横ばいです。もともと土地の単価が高く、上がる余地が小さいことに加えて、区画が大きいため総額が上がりすぎるという事情があります。
数字と実感が合わないこと
郊外エリアは2.2%上昇していますが、当社の実務感覚では、売れるまでの期間はむしろ長くなっています。地価が上がっているのに売りにくい、ということは起こります。
地価はその地域の平均的な動きを示すもので、個別の物件が売れるかどうかとは別の話です。査定では、地価ではなく近隣の成約事例を根拠に使います。
売却価格を決めるときの使いどころ
では公示地価は何に使うのか。当社では「方向の確認」に使っています。売り出す時期を半年ずらすかどうかを判断するときの材料です。価格そのものは、次の4点を見て決めます。
- 土地の形。整形地か、旗竿地か、間口が狭いか。同じ面積でも建てられる家が変わります。
- 前面道路の幅と接道の状況。4m未満ならセットバックが必要で、実際に使える面積が減ります。
- 傾斜と高低差。道路より高い、あるいは低い土地は、造成に費用がかかります。
- 周囲の状況。日当たり、隣家との距離、線路や幹線道路からの音。地価には反映されません。
これらはすべて、現地に立たないと分かりません。図面と地価公示のデータだけで査定額を出す会社もありますが、当社が訪問査定をおすすめしているのはこのためです。
地価が上がっていても、売り時とは限らない
地価が上がっている局面では、買主側も「もっと上がる前に」と動きます。一方で、住宅ローンの金利が上がっていれば、買える金額の上限は下がります。この2つは逆に働くため、地価だけを見て売り時を判断すると外します。
実務で見ているのは、同じ帯の売り出し物件が何件あるか、そのうち3か月以上動いていないものが何件あるか、という数字です。競合が少ない時期に出すほうが、地価が数%上がるより効きます。
まとめ
- 公示地価は「標準地」の価格であり、個別の土地の価格ではありません。
- 更地・売り急ぎなしを前提とした価格なので、実際の取引価格とはズレます。
- 査定の根拠には、地価ではなく近隣の成約事例を使います。
- 売り時の判断には、地価より競合の売り出し件数のほうが効きます。
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Author
根拠を1枚にまとめます査定 / 不動産鑑定補助
前職は金融機関の融資担当。2016年から当社で売却査定を担当しています。査定額そのものより、なぜその額になったかをお伝えすることを大事にしています。