
四枚を混ぜない
収穫も乾燥も保管も、四枚を別々に通します。作業量は単純に四倍になりますが、ここを崩すとブランドの前提が消えます。
混ぜれば平均になります。分ければ手間は増えますが、そのぶん説明ができます。私たちが分けている理由です。
混ぜた瞬間に、
説明できなくなる。
一つの袋に入れた時点で、
どこの土の米か言えなくなります。
集落の中の四枚は、歩いて回れる範囲にあります。それでも標高で50m、土質はまったく別です。粘土質の一番田は粒が締まり、砂の混じる川向はやわらかく炊き上がります。混ぜれば真ん中の味になり、飛び抜けた欠点も長所も消えます。売りやすいのは間違いなくそちらです。
それでも分けているのは、どこの田んぼの米かを言えなくなるのが嫌だからです。おいしいと言われたときに、どの一枚のことなのか分からないのでは、翌年に同じものを作れません。
雨の多い年の一番田は水っぽくなります。猛暑の年の段は香りだけが立って甘みが薄くなります。実際にそうなった年がありました。同じ味を毎年お届けします、とは書けません。その代わり、その年がどういう天候だったかを紙に書いて袋に入れています。
最初から分けていたわけではありません。刈り遅れた一枚を別に置いたことが、きっかけでした。
1998
祖父から田んぼを引き継ぎました。当時は四枚とも同じ袋に入れ、農協へ出していました。
2011
段の稲だけ刈り遅れて別に置いたところ、炊いたときの香りが明らかに違いました。分けて売るという発想はここから来ています。
2015
精米機を入れ、直売所を開けました。最初の年に売れたのは全体の1割ほどで、残りは今までどおり出荷しています。
2021
年ごとの違いを説明できないまま売っていたので、保存しておいた五年分を一日で炊きました。書けることと書けないことがはっきりしました。
2026
一番田・川向・段・溜。四枚とも呼び名のまま売っています。混ぜたものは扱っていません。

収穫も乾燥も保管も、四枚を別々に通します。作業量は単純に四倍になりますが、ここを崩すとブランドの前提が消えます。

精米した米は日に日に落ちます。まとめて搗いて在庫にすれば楽ですが、それをやめて、搗いた日を袋に書いて送っています。

天候、水の入り方、うまくいかなかったこと。良いことだけを選んで書くと、次の年に嘘になります。
四枚あわせて、
百五十五アール。
増やす予定はありません。
三人で見きれる広さがこれです。